母の教え

 「男は顔よ!顔で選びなさい」

と、幼稚園児の私の肩を掴みしゃがんで、目線を合わせ母が言った。

 母の伝えたい事は何となく分かった。

お金があっても、無くなるどころか借金したら、代わりに働けるのか?

 優しいから=男性はモノにするまでは優しいが、自分のモノになった途端に態度が豹変するから、それでも好きでいられるのか?

 何があっても、好きでいられる人を愛しなさいと。

 そして、母は分かり易い面食いだ。

 真田広之さんが流行れば、真田広之さんがカッコいい。としちゃんが流行れば、としちゃんがいい。

 底辺には矢沢永吉さんと、B'zの稲葉さんが常にいる。

 その上をキムタク君や福山雅治君が行ったり来たりする。

 電車に乗った時、母の隣に母と同じ歳くらいの男性が座ると、

「ジジイ、嫌い!」

と言って席を立ち、離れて座る。私はその男性に聞こえないかと、ヒヤヒヤしてた。

 そして、私が俊彦のDVDを観ていると、

「確かに高見沢さんは女の私から見ても綺麗だけど、私や他の女の子みたいに、福山やキムタクがいいと思えないの?」

と、説教された事がある。

 母よ、娘だからといって、タイプも同じと考えないで欲しい。

 貴女はイケメンが好きだろうが、私は美形が好きな違いだろう。仕方ない。