今からエレキギターを買いに行け!

 私の父は兎に角、モテた。

 父はタイプの女性を見つけると、結婚して子供がいる事をすっかり、忘れて口説き落としてしまう人だった。

 人間的には尊敬できる。中学から、下宿していたので、自立出来ていたし、家事・洗濯当たり前に出来た。

 25歳頃にはビジネスホテルだが、支配人になっていて、色んな会社の社長と友達だった。普通は自分が勤めている所しか、知り合いにならないのだが、町を歩くと、必ず知り合いと会う。

 おまけにフランク永井さんと、東海林太郎さんが好きで、自分のレコードまで、出していたので、今で言うインディーズのはしりだ。

 習った事が無いのに、ギターとピアノも弾けた。多分、興味を持つと、とことん自分で突き詰めて行く人だったのだろう。

 前に私を車に乗せた時、ぶつかりもしないのに、クラクションを鳴らしたので、父に

「どうして鳴らしたの?」

と訊くと

「ふう~ん?今、可愛い娘が通ったから」

と、平気で娘の私に言う。

 地図を持ちながら迷っている若い女性達に声をかけ

「僕、そこ分かりますよ。車で送ります。娘が乗っているので、狭いですが、どうそ」

と、私は

「娘の私をだしに使って」

と、心の中で言ったが、父は嬉しそうにその女性と話していたので、そこまで、女好きならしゃーないなと思った。

 この話しは必ず2度聞きされるのだが、父の年下の友人が昼にやって来て

「お宅の旦那に愛人を寝とられた」

と、母に言い付けに来た。

 母も被害者なのに

「申し訳ございません」

と、謝っていたのを覚えている。

 その友人も、不倫していて、その愛人を父に寝とられたらしい。

 アルフィーの歌で挽歌と言う歌がある。

 友人と同じ人を好きになったと言う内容だ。父が私に

「この歌、父さん好きだな」

と、ポツリと言った時期に重なった。多分、自分と重ねて合わせていたのだろう。

 相手の愛人さんだったから、まだ、良かったものの、奥さんだったら大変な事になっていた。

 母は母で、電気屋さんから、洗濯機を買ったら洗濯曹に100本の薔薇の花束が入っていたと、私に

「なんだろね?サービスかしら?」

と、鈍い処がある。だから、父と喧嘩しながらも続いたのだろう。

 モテると言えば父の弟、私にとって、叔父だが、もう父より先に亡くなったのだが、父は自分から行くタイプなら、叔父は黙っていても、女性から寄ってこられるタイプだった。次男坊のせいか、どこかのんびりしていて、ある時、また母に若い警察の男性が

「お宅の旦那さんの弟が僕の彼女を奪ったから、返して欲しい」

と、男泣きをして

「ほとほと困ったわよ」

と、叔父はその女性と付き合っても良いし、付き合わなくてもどっちでもいいと。

 顔も良かったし、背も180cm以上あり、高かったから、モテるのは仕方ないが。

 モテるタイプに限って自分がモテているのを気付かない。

 愛されるのと、モテるのとはちょっと違うだろう。

 モテたければ、今、流行りのヘアスタイルにそれなりのコーディネートした服を身に纏い、仕事が出来ます、学生さんなら、運動出来ます、成績もそこそこ良いですアピールをすればいい。

 あと、手っ取り早いのは部活で活躍するかバンド組んでライブをやる。

 私がある女性にエレキギターで、只、ドレミファソラシドをひいたら、目を潤ませて

「凄い!カッコいい!」

と、言われた時

「これか~。男の子達がされたいのは」

と、分かった私だった。

 モテたければ、今からエレキギターを買って来れば良い。

 さぁ、動機が不純でもいい。楽器屋さんへレッツらゴー!!