夜のお仕事

 私はホテルのフロントを半年で辞めてから、アルバイトで勤めていた。

 もし、歌で世に出る時、正社員なら辞める時、迷惑をかけると思ったし、1日で辞めた事もあるので、普通の仕事は向いていないと感じていた。

 日中、渡島支庁の事務手伝いと夜、函館にしかない、ハセガワストアーと言うコンビニで、焼き鳥弁当を主にパートで、2つ掛け持ちしていた。

 兎に角、母を養う為と家のローンを払う為、働いた。

 立ち仕事ならまだ良いが、事務補助は座り、単調な仕事だったのでうとうとしてしまう。

 私の中では仕事3つ掛け持ちしても、土方をしても、水商売はしないと決めていた。

 焼き鳥を焼いてた私に、おにぎりを作る担当の年配の女性が

「あんた、こんな所で働いてないで、コンパニオンやりなさいよ!私が紹介してあげるから。只、男の人とお寿司食べるだけだから。貴女なら、幾らでも稼げるよ!勿体無い!」

と言われたが、丁重にお断りした。

 今の人はどうか分からないが

「コンパニオン?やっていいじゃん」

と言う乗りの女性では私は仲良く出来ない。

 古いのでしょうか?人間は額に汗した分だけ賃金がもらえると思っている。

 職業差別ではなく、太陽に照され汗だくになり、男性に混じって力仕事をしている、女性に勝てる訳が無い!

 どちらがまっとうに生きているか?言わずもがなでしょう。

 何故、この世は与える方法を間違えているのだろうか?

 TVで歌っている人より、医療従事者や介護職の人に高い賃金を支払うべきだと思う。

 私は女を売り物にしている人はその人の考えだから何とも言えないが、私はそういうお店に行く男性は受け付けない。

 奥さんと一緒にイタリアンレストランでも、行けばいい。同じお金を払うなら。

 妻も彼女もいない?なら、日中、昼食とっている女性に声を掛ければいい。

 そのプロセスを面倒臭がっている男にイイ女が靡く(なびく)訳が無い。

 私は東京に行った時、ホステスにならないか?とスカウトされたり、嫌だったところにウェイトレスをしていた時、一つ年下の男の子に

「のぞ美さん、コンパニオンやれば?」

と言って来たので辟易しながら、嫌だと言うと

「コンパニオンにも、プライドがあるんだぜ!」

と言った時、知ったか振って職業差別をした苦労知らずの男の子で、馬鹿かと感じた。ウェイトレスにもプライドはある。

 どの仕事でもプライド持ってやっている。何も銀座のナンバーワン、ホステスさんだけが、プライドがある訳じゃない。

 私の知っている男の子に一人はお姉さんが、もう一人がお母様がコンパニオンをしていた。

 10代ながらも、水商売の大変さを肌で感じていた。だから、私に一度も水商売でもすればとは言わなかった。

 お母様がコンパニオンをしていた男の子が、高校も行かずにアルバイト3つ掛け持ちして、身も心もぼろぼろになったので

「高校位は卒業したら?これからが大変だよ」

と言うと

「父親違いだけど、小学生の妹が居て、お袋もいくら綺麗とはいえ、40すんで、若い子に仕事持ってかれて、俺が働かなきゃどうするんだよ。のぞ美さん」

と言われ、お母様も

「いくら17とはいえ、夜中に一人ぼっちにして、寂しいけど言わないの。辛いだろうに」

とお母様とのお話しも聞いて、小学生の妹さんは実家に預けてお仕事に行くのだが、いくら親とはいえ、二人も頼めず、男の子は真夜中一人でDVDを見ながら、過ごしている。

 私はどう話せば良いか分からなかった。

 そんな男の子達が幸せになってくれる世の中になって欲しいと感じる。

 函館に居た時はやらないと言っていたが、病気になり、母を養う為にはホステスしかないかと、悩んだ事がある。

 遠距離の父が

「やめて下さい。全て父が悪かったです!もう一度、きちんとした時に考えなおして下さい。

 ホステスは表と裏が違い過ぎる世界です。のぞ美は夜の世界は覗いてはいけません。

 良い点もあります。男に不自由しない事です。ですが、その内、男無しでは眠れなくなります。酒と煙草と男と、のぞ美なら薬・・・」

と、10枚くらいの便箋に赤ペンで書かれて来た。

 何とか、夜のお仕事をせずに乗り越えた。

 そこには色々な方に助けて頂きながら。

 全てのお仕事が水商売だろう。人生どうなるか、特に今は分からない時代だから。

 私は自分で後9年とタイムリミットを設けている。60歳まで生きれたら万々歳だと、50歳の時、決めた。決めないと私みたいな人間は前へ進めない。

 今は自分の出来る事をやりきるだけだ。

 あと、人生と言うか、今を楽しむ事!

 私は今を楽しむのが下手だ。祭でも、終わった虚しさと家路を考えてしまう。もう、その癖を止めよう。

 楽しく生きてやるぞ!ひゃほほい、ひゃほほい、ひゃほほい、ほい!