魔の2番テーブル
傷心旅行だろうか?
髪の長い綺麗な女性が一人、入って来た。
その瞳に影があった。
私は
「こちらへどうぞ~」
と、2番テーブルへと、案内した。
「ホットミルクを下さい」
私は
「かしこまりました」
と、カウンターへ行く途中、18番テーブルの観光客の男性から
「すみません!ビール下さい」
と、言われて、そのまま厨房へ生ビールを注いで、出した。
2番テーブルは魔の2番と、呼ばれていて、大きな柱に隠れて、お客様を確認出来ないのだ。
私とした事が、ウェイトレスあるあるで、他にも、オーダーが入り、すっかり、ホットミルクをカウンターの主任にオーダーを通すのを忘れてしまっていた。
5分くらい経ち、急いでオーダーした。
言い訳になるが、兎に角、忙しい時期だった。
パートの私が、レジの責任者になっていた。社員は他にもいるのに、ホテルのフロントをした事があるという理由で、お客様が帰られる時、歩く様に走り、レジへ向かう。
主任がホットミルクを既に、カウンターに置いてある。
レジから戻り、10分経っていた。
「大変、お待たせ致しました」
と、持って行くと、その女性は涙目になって、瞳をウルウルさせていた。
ただでさえ、辛かっただろうに、注文した物も遅いなら、泣きたくもなるだろう。
勝手に傷心旅行と決めつけていたが、そこは女の勘で分かる。
彼女の目に函館の夜景はどう見えただらうか?
私ももらい泣きしそうになった。
ご免なさい、お嬢さん。私も寄り添います。