一週間目でプロポーズ~最後のお茶~

 私は全身検査を受けた。

どこも異常なし。内科の先生がレキソタンは出せるが、専門の方に行った方が良いとの事で、山の中にある(精神病院あるある)病院へ母の車で向かう。

 女性院長がやっている病院だが、どうやら、外れくじをひいたらしく、男性医師に当たった。

 また、発作が起き、病院へ行くも

「苦しいかい?苦しみなさい!注射も薬もあげないから」

と言い、母に女の分際で持ち家と普通乗用車に乗っているのはおかしいと、一時間以上、こんこんと話したそうだ。

 そして、大学病院の門を叩く。

そこで、今現在も、診て下さっているJ先生に出会う。

 入院する事が決まり、工場の人達は

「早く戻っておいで」

と、本気で心配して下さった方も居た。

 入院費は会社の保険で、一年間だけ出された。

 J先生も、3ヶ月位で治せると思っていたらしいが、まさか、27年経った、今まで、続くとは考えなかっただろう。

 入院するのは人生初だ。

それも、窓には鉄格子があり、病院の一番奥にある。

 病院にATMがあるのを知らなかった私は一円もない。

母が来るまで、お金が無いが、どうしても煙草が吸いたく、無い頭をひねり、テレフォンカードを担保にJ先生から、200円借りた。

 J先生も、小さな小銭入れを見ながら、200円貸すと自分のお昼代が無くなるんだけどな、という表情で、100円玉2枚渡してくれた。

 多分、後にも先にも先生から、お金を借りたのは私だけだろう。

 そうして、一服出来た。

当時の私は煙草と缶コーヒーがあれば生きていけた。

 大学病院にまさか一年入院するとは思っていなかった。

 J先生が函館の父に電話をするも、怒鳴って話しにならなかったそうだ。

 6人部屋に入る。

 消灯が、pm9時だから、月9等はビデオに撮って、日中皆で観る。

特別に大晦日だけは紅白歌合戦を観て、am1時に寝ても良いことになっている。

 皆でビデオを観終わった時、視線を感じると、17歳のS君が私を見ていたので

「もしかしたら、私の事好き?」

と訊くと

「入院して来た時から、好きだった」

「なら、付き合う?」

にまた、頷く。

 私24歳、S君17歳だ。

会って、一週間目で付き合うも、また、一週間後に

「僕が18歳になったら、結婚して下さい」

若さとは怖いものだ。

「なら、結婚指輪を買って来て!」

と言ったら、次の日、本当に買って来たのだ。

 外出届けを出して、駅前まで、プリクラで記念写真を撮った。

 ある時、J先生に

「のぞ美さんのしていることは不純異性交友だからね!」

と言われ、結婚を考えているといったが、カルテに赤文字で二人の外出は禁止と書いてあるらしく、当時のサブDr.が

「いやぁ、驚いたよ!いつも、冷静なJ先生があんな事書くなんて」

と言って、病室を出て行った。

 その関係も、私の心変わりで終わる。

3回、説得した。

「俺、死ぬ!」

と言うから、どうしたものか?考えあぐねた結果

「俳優になりたいんでしょ?なって、有名になって、私に別れなければ良かったと見返してみて!だから、私を憎んでも、いいけど、自分を殺さないで!」

にようやく、理解してくれて、別れた。

 S君が先に退院して行った。お父様も、お母様も、私の事を責める訳でもなく、淋しそうに去って行った。