女性の嫉妬~最後のお茶~
Mちゃんという、個室に入院していた、私より、年下の女の子がいた。
毎日、親友がやって来る。
外泊は何故か、親戚の女性とだ。
自分では、事務の仕事をしていたと言ったが、中卒でホステスをやっていた。
ホステスがもう一人いた。Yちゃんといって、背が高く、自分はホステスやっていると公言していた。
私はある事で、Mちゃんに嫉妬してしまった。
そして、彼女が鬘(かつら、今で言うとウィッグだ)な事に気付いてしまい、母との電話に
「あの、ハゲかつらがよー!」
と、聞こえる様に言ってしまった。
男性でも、髪の毛が無くなるのは大変な事だろう。女性、特に若い女性なら、尚更の事だ。
サブDr.に
「のぞ美さんは言ってはいけない事を言いましたね?」
に、改めて、申し訳ない気持ちになり、近所のスーパーで、似合いそうなお花に手紙を書いた。
「鏡を見ると、そこには馬鹿な私が映っておりました。ご免なさい」
と。彼女の部屋をノックして、親友と談笑していた所に
「これを受け取って」
と、渡して自分の病室へ戻った。
Mちゃんは外泊すると、必ず、お酒でOD(オーバードーズと言って多量に薬を飲む事)をして、意識が無くなり戻って来る。
外泊したMちゃんが、病棟に走って戻って来て
「のぞ美さん!これっ」
と、私にデパートの紙袋を渡して去って行った。
私は何だろう?と中を開けると、夏用のパジャマに、綺麗な文字で
「のぞ美さんには嫌な事など言われておりません。ご自分の事を馬鹿だなんて、仰らないで下さい。いつも、ご飯の時、ドアを開けて下さり感謝しております」
と、書かれあり、自分では、無意識にしてた事が、感謝されていたなんて思いもしなかった。
そして、花一輪に対してパジャマのお礼・・・
参りました。
それから、Mちゃんの部屋に入れてもらい、私と同じ位、本が置かれてあり
「まだ、これ読んだ事無い!」
と、思わず飛び付いた私に
「お貸ししますよ」
と、借りた。
私はアルフィーのビデオを座敷の間で、観せてあげたりしたら、喜んでくれた。
彼女とは趣味が合った。アルフィーなら、俊彦が良く、ダウンタウンなら、松ちゃんが良いとか、本好きなのとか、発見があり、楽しかった。
ある時、1ヶ月だけ入院しに来た女性に私が、稲森いずみちゃんに似てると、Yちゃんの前で言われた。
次の日、誰も訊いて無いのに、Yちゃんが
「私、南野陽子に似てるって言われるよ!」
と、言ったので私は(ナンノより、美人なのに、変なの?)と、思いながら、昨日の件に気付いた。
Mちゃんが、ヒール15cmもあるサンダルを履いていた時があり、Yちゃんに対抗しているのだなと、私は分かった。
私は背が高くなくても、顔立ちと、品の良さではYちゃんより、優れているのに・・・と、Mちゃんが、痛々しかった。
私はMちゃんにMちゃんはYちゃんにYちゃんは私に嫉妬していたのだ。
私は女性の嫉妬には滅法弱く、すぐに負けましたと、負けて勝つ方を選んでしまう。
嫉妬は良い嫉妬と悪い嫉妬がある。
良い嫉妬は互いを高め合う事。
悪い嫉妬は足の引っ張り合いをする事。
私は後者の嫉妬はされまくって来て、嫌な思いをしたので、そうなりそうな時は素直にその気持ちを相手に伝える。
「あなたの良さに嫉妬してしまった」
と。そして
「ご免なさい」
と。言ってしまう。
そうすれば、言われた相手も、悪い気はしないだろう。
私は20代の頃に年上の女性に苛められたので、若い女性は苛めない。年上なら、尚更の事だ。
Mちゃんと二人、眠れなく、ソファーで、煙草を吸いながら
「のぞ美さん。私、鬘なんですよ。だから、好きな人が出来ても、言えなくって」
に、私は
「それでも、愛してくれる人が本物だよ」
どこまで、馬鹿なんだ?のぞ美!と、もう一人の私が、言った。