母よ!諦めてくれ!

 2022.6.2

 

 良く、一つ年上の姉さん女房だと、男性は出世しやすいと、昔から言う。

 私の母は父より、5つ年上だった。

今でこそ、珍しくは無いが、小学生の頃

「中田ん家、お母さんの方が5つも、年上なんだ?俺ん家なんて、母さん10年下だぞ!」

と、良く言われた。

 クラス中、殆どの家庭が、父親の方が年上だった。

 精神的に女性の方が大人だから、年下が、多いのだろう。

 1つ年上の姉さん女房が良いと言うのは職場での、女性に対してどのように対応したら良いか、20年下の妻には相談しにくいし、余りに年上だと母親みたいに感じてしまい、一番、相談しやすいのが、1つ年上の妻だからだろう。

 アドバイス受けるのも、相手が年上だと、聞きやすいし、プライドが傷付かない。

そして、生きて来た時代が同じだから、話しやすい。

 父は奥尻島の出身で、5人兄弟の長男だった。実家は奥尻ハイヤーで、私の叔父が創った会社だ。

 しかし、父は奥尻島にいるのが、嫌なのと、それなりに成績も、優秀だった為、後は継がずに函館に中学生から、下宿する。実家は妹や弟に任せて一人で出て来た。

 母はと言うと、複雑な環境で、父を戦争で亡くし、母は心臓発作で亡くし、姉がいたらしいが、赤ちゃんの時に逝ってしまい、父方の弟の家で育てられた。

 だから、高校を卒業したと同時に函館に事務の仕事をしていた。

 矢張、居ずらかったのだろう。

そして、肉親の顔を写真でしか、知らない。

だから、一人娘の私に執着した。

 父は若い頃の恋愛話しを私にしてくれたが、母は一切しなかった。私は

「母、好きな人いなかったの?」

「同じ電車に乗っていた、イケメンかな?」

と、私はそれ以上、聞いてはいけない気がした。

 母は女の勘が鋭く、私は友人のつもりだったが

「〇〇君って、どんな人?」

「単なる友達よ」

「どんな顔してるか、写真撮って見せて」

と言われると、必ずと言って、後に告白された。

 母の方が女として、上手なのだ。そして、私に

「のぞ美!男は顔よ!顔で選びなさい」

と、幼稚園の頃、肩を掴まれ、しゃがみ、目を見て言われた。

「よく、男は顔じゃないと言う人がいるけれど、それは嘘!顔が良い事に越した事はないのだから。優しいからと言って付いて行ったら駄目❗男の人はモノにするまで、偽りの優しさを振り撒くものなの。優しいからで、選んでその優しさがなくなったら、付いていけないでしょう?後、お金持っているからと言って付いて行って、一文無しどころか、借金作ったら、その人の代わりに働ける?無理でしょう?だから、男は顔で選びなさい」

と言われた。

 母の言う事はあながち間違えていないぞと感じる。

 人それぞれ好みはあるが、自分が好きになった人なら、どんな条件でも、受け入れられる。後、男の顔は生きざまが出ると言われる。

 しかし、母のイケメン好きはハードルが高い。

 面白い事に私は自分から、好きにならないと、付き合えないタイプだったから、彼氏が出来、帰りが遅くなっても、何も言わないが、男性から、言い寄られて、デートに誘われた時(上手に断る事が出来ず)、車で、家から一本離れた道路で、待っているとの事で、流石に家の前では待てないらしく、私が出ようや否や、先に行って、車の真正面に立ち、相手の男性の顔をマジマジと見て、私とすれ違いに

「あの男は駄目❗顔が悪い」

と私によく言った。

 母の勘が顔を見て、娘を幸せに出来るかどうか、瞬時に見分けるのだ。

 勿論、その男性とは何とも思っていなかったので、丁重にお付き合いはお断りしたが、私が好きな人を悪く言った事はなかった。

 前に夜8時くらいに、会社の男の子が、玄関に立っていて、母がなにか?と訊くと

「のぞ美さんと、これから遊ぼうと思って」

と言われ

「娘は今、シャワー浴びてるから、恥ずかしいと思うので、今日の所はお引き取りください」

と言って返したそうだ。

 私にしても、別段何とも思っていなかった男性で、断る術を考えずに済んだので良かったが。

 中学生の頃、夕方6時に電話が掛かって来て、クラスメイトからで、今、皆で集まって呑んでるから、私にも来ないか?と言われ

「家は部活や塾以外の門限が5時迄だし、お酒呑んだら怒られる」

と言って、電話を切ると

「貴女をそんな軽く見られる娘に育てた覚えはありません!」

と私が怒られ、次の日、学校へ行くと

「中田、付き合い悪いの!」

と言われ、踏んだり蹴ったりだった事もある。

 私の家は意外に厳しいのだ。

その代わり、アルフィーの10万人コンサートへは東京まで、ツアーのセットなら、添乗員さんも付くからとOKをもらえた。

 やるべき事さえしていれぱ、してはいけない事をしなければ、エレキギター🎸も、バスケットシューズも、買ってもらえたし、本なら幾らでも買って大丈夫だった。

 恋愛も、間違った事さえしなければ(今で言うパパ活等、自分の心と身体を汚す様な事)OKだった。

 それにしても、母は分かりやすい、イケメン好きで、俊彦のDVDを観てた私に

「男は顔よと、言ったけど、確かに高見澤さんは女の私から見ても綺麗たけど、私や他の女性みたいに、福山雅治とか、キムタクとか、B'zの稲葉さんが好きと言えないの?」

と、言われたが、母よ!タイプまでは貴女に似なかったらしい、諦めてくれ!笑。