名前 Vol.2

 2022.6.5

 

 ある時

「俺、のぞ美さんの事、好きだ!」

と、高校生の学君が言った。

 皆、公開告白か?と、静まりかえった。

「どうして?」

と、私が訊くと

「のぞ美さんだけ、俺を君付けで呼んでくれるから」

 学君は愛されキャラクターで、年上からも、年下からも

「まなぶ~」

と呼ばれていたが、私は一人の人間として、敬愛の念で

「学君」

と、呼んでいた。

勿論、他の高校生や大学生にも、君やさんを付けて呼んだ。

 そして、私は皆から

「のぞ美さん」

と呼ばれていた。年上の男性からも、さん付けだ。

 私は老けて見られたから、年上の人からも、自分より、年上と間違えられたからだ。

 私は意識せずに、君付けしていた事か、学君からすると、嬉しかったのだろう。

 学君も、本当は呼び捨てにされる事が嫌だったらしい。

 それを知って、私も嬉しかった。

学君には恋のキューピット役もしてもらい、誕生日プレゼントには紅茶のカップのセットも、もらった。

 今頃、何しているのだらう?

幸せに暮らしていると良いが・・・・・・。