カルアミルク

 2022.6.22

 

 私が二十歳だった頃 。

 会社の飲み会で おしゃれな居酒屋みたいなところへ行った 。

 そこで、私は

「カルアミルクを下さい」

と言ったら、髭面の店長が

「粉ミルク」

と馬鹿にしたような態度をとった 。

 私は一応客だ。 しかし、こういう馬鹿なやつも店長であるんだから仕方ないなと思った。

 岡村靖幸の歌にカルアミルクという歌がある 。

 男性がカルアミルクを頼むのは女性より 勇気がいることだろう 。

 ロックを飲むとか ストレートを飲むとかだったら男らしいと言われるが 、カルアミルクを頼むと 情けないみたいな 風潮になる 。  この歌は 本当はバーボンを飲んでるけれどもちっとも美味しく感じられない 。

 カルアミルクをまた飲みたいよと喧嘩した 彼女に言っている歌だ。

 電話なんてやめて六本木で会おうよと呼びかけている 。

 岡村靖幸は 多分10代の青春のまんま 生きていたのだろう 。

 だから自分の純粋さと 社会の 不純さの中で もがき苦しみ 、薬に走ったのだと思う 。

 他のミュージシャンは 悪いところもあるなぁと思うけれども、こと岡村靖幸に関しては かわいそうだと思ってしまう 。

  自分で自分のことを天才といい、 俺って背も高いし、かっこいいし、 テクニックは最高なんだ ぜと、自分で言ってしまっている。

 その心の裏では 好きな人に自分から好きだと言えない もじもじした岡村靖幸がいる。

 だから私は岡村靖幸の歌に惹かれるんだと思う 。

 いつまでも青春を歩んでる人にとって 大人の現実社会は 生きづらいだろう 。

 だからといって薬を肯定しているわけではない。

 ただ岡村靖幸の場合は とても 辛かったんだろうと思う。

 どこかのミュージシャンみたいにキメセクをやるわけではないし、 好きな女性にも自分から好きだと言う勇気もない。

  それが音楽に 向けられて ずっと10代のまんまでいるわけにもいかず、 悩み苦しみ 薬に走ったのだと思う 。

 私のことを粉ミルクと言った 店長に相反して そこに一人いた イケメンの ボーイさんがいた。

 私が帰ろうとすると コートを取り、着せてくれて、 その時

「いい香りがする」

と 私に言ったのだ 。

 リップサービスだということぐらい 私もわかっている。

 しかし、言われて嫌な気はしない。

 顔も店長より良いし 、はっきり言って彼のほうが 将来伸びると思った 。

 彼みたいな男の子がいるお店だったら また女性は来たいと思うだろう。

 店長と雲泥の差だった 。

 今はビールやブランデーウイスキー芋焼酎など飲んでいるが 時たま無性にカルアミルクを飲みたくなる時がある 。

多分飲んだら 初恋を思い出すだろうな。