ぼんやりとした不安 Vol.1

 今年の誕生日ほど、たくさんの方におめでとうと言われた事がないくらい、有難い誕生日だった。

 この話しをしようかどうかとても悩んだが、今、苦しんでいらっしゃる方、少し読んでいただきたい。

 芥川龍之介さんが、遺書に書いた有名な言葉。

 私は2009年11月14日に安定剤を100錠以上ペットボトルの水で、まるで相棒に出ていたミントを噛る警視総監の様に飲み込んだ。

 5階に住んでいたのだから、飛び降りれば簡単に死ねるけど、痛いのは嫌だから。

 東京の高層ビルから飛び降りたら、意識が無くなり、楽に死ねると聞いた事があるが、5階は中途半端だ。

 癌になった訳でもない、失恋した訳でもない、借金した訳でもない。

 その日、父から電話が来て

「Nが捕まった!」

「なんで?」

「分からないか?」

「盗み?」

「違う。買春だよ!未成年と知って2万で買ったら、捕まった!教師も首だってさ!だから、連絡するなよ」

ショックだった。

 私は女だからと函館を出るのを反対されたけどN君は男だからと、勿論、自分も頑張ったのだろう。

 東北大学を出て、教師になっていた。

 電話で、久々に話して

「今度、勉強教えてね」

と言って切った。

 私と違い好きな事出来て、教師にまでなって、なんて馬鹿な事をして、捕まったの?

 刑事ドラマでは普通に両手に手錠を嵌めるが、本当は手を後ろにして、手錠をかけられ、ロープで繋がされ前を歩かされる。

 ヤクザなら、知っているが、教師だったN君は知らないから、そうされると、人間として屈辱的に感じると、父は言っていた。

 私は良い思いをして、教師になって自分で人生メチャクチャにしたN君と自由にさせてもらえず、病気になった自分を人生バカらしいと、感じてしまった。

 ぼんやりとした不安はこういう感じなんだろうなと感じて、あっちの世界へいきたくなった。

 屯服で出されたのと、飲み残した錠剤が100錠以上あったので、母が眠ったのを確認して、TVをつけたまま、淡々と、機械の様に薬を口に入れて水で流す。

 こういう事を防ぐ為に安定剤は2週間以上薬が貰えなくなっている。

 水を飲み過ぎたのでお手洗いに行きたくなって、トイレの便座を見たまで覚えている。

 気付くと、暗闇の中を歩いている。

 左だろうと思う方を見ると母が立っていて、私の回りに医者と看護師さんが居て、私は便をしていて、若い男性看護師が受け止めていたので、恥ずかしくなり

「臭いよ、臭いよ」

と言って、また、眠った。