おい!赤髪?

 「おい!赤髪?おい!赤髪?」

始めは誰の事か分からなかった。

 もしかして、私?

当時の私は赤のヘアーブリーチを買って来て、今は亡き、チコに染めてもらっていた。

 「お~い!赤髪?お前だよ!」

に、私は

「あなたね、人に対して失礼だろ?きちんと、名前を呼びなさい。分からなかったら、聞きなさい!」

と、注意した。

 どうやら、注意されたのが初めてだったらしい。

 先程の勢いは何処へやら。黙りしていた。

それから、彼は紙に何か書いている。

 廊下を歩きながら、何気なく、紙を覗き込むと

「モデル=大門さん、前髪禿げてる=伊東さん、眼鏡=中田さん」

と、書いてあった。

 眼鏡=中田さん?に少し、ショックを受けつつも

(きちんと、分かってくれたのだ)

と、少し嬉しくなった、私。

 彼は名前を覚えるのが、苦手だったのだ。

そして、気が小さい。

だから、私にあんな事を言ったのだ。

 私は昔から、男の子から、良く

「生意気だ!」

等、色々、突っ掛かられた。

 その子が退院する時、ソワソワしている。

家を出て、一人暮らしをしなさいと、父親に言われ、アパートに暮らすそうだ。

 余程、一人暮らしが怖かったのだるう。

3日後、救急で運ばれて来た。手首を切って自殺しようとした所に父親がやって来て、発見されたのだ。

 「いてーよ。いてー」

と、意識が朦朧としている。

 手術して、命は取り止めた。

 私は今でこそ、自己満足と言われるだろうが、千羽鶴を同室のマキさんに忘れたので、折り方を聞き、鶴を折って点滴の棒に掛けた。

 「中田さん、俺、情けないけど、怖くて」

と私に言う。

 「でも、こんな事したら、駄目だよ」

と、ありきたりな事しか言えなかった。

 あ~、自分が情けない。