そして、秋田 ~最後のお茶~

 函館からフェリーで青森まで着いた。

さぁ、これから、はなの都、東京か?

母の故郷、秋田へか?

 母の運転する車で、母と、としと、私とで、南へ向かった。

 お昼を食べた記憶が無い。多分、食べなかったんじゃないか?

 母は華奢な身体と違って、強靭だった。

船酔いしそうな私は何とか、乗り越えられた。

 母は秋田へと、向かう。私も、反対はしなかった。

 青森を少し走り、ガソリンスタンドで、給油する。

 前も、札幌まで、行きは良かったが、帰りは霧のオロフレ峠をライトで照らしても、中央線が1m見えるか見えないか位で、落ちたらまっ逆さまに、死に直面しただろう。

 代行車が、たったの1台だけだった。いただけまだましか。

 母は運転能力があった。

学生の頃、バスケをやっていただけあり、運動神経は至って良い。

 そのまま、秋田までと向かった。

窓を開けて生ぬるい風に吹かれながら、もうすぐ、初夏を迎える、6月6日の事だった。

 梅雨はまだ、来ていない。

母は私がダビングした、B'zのカセットテープを流していた。

"ゼロ カラ ハジメヨウ ゼロ ニ ナリタイ"

 軽く口ずさみながら、私は後ろの席に居た。

助手席はとしの特等席だ。顔をだし、舌をたらしながら、風を浴びていた。

 母は秋田駅前の道路を逆方向に入ってしまい、バスの運転手さんに、睨まれながら、向こうへ行け!とばかりに視線を送る。

 「しまった~!どうしよう?」

と、何とかハンドルを切って、駅前から、抜けた。

 そして、公衆電話を探して、Iさんの家に掛けた。

 母が、若い頃からの知り合いだ。

「もしもし。今、秋田市にいるんだわ。家まで行っていいかしら?」

と、押し掛け女房ならぬ、押し掛けお泊まり作戦に出た。

 母も、やるの~と、思いながら、Iさんが、車で来て、誘導してくれた。

 Iさんの家にはなんと、猫が居た。

「シャー!」

「ワォン!ワォン!」

と、ワン、ニャン合戦が始まった。

 

               続くかな?