母性

 私は子供を産んだ事がない。

産んだ人に言わせると

「子供を産んだ事がないから、分からないのよ」

と言われる。

 私は果たしてそうだろうか?と、疑問に思う。

 一時期、毒親という言葉が、流行った。

お腹を痛めて産んでも、親になりきれない人が増えたからだ。

 いや、我が子だから、自分の思うように育てようとした、我が儘からくるのだろう。

 昨年、Sさんが、ホテルから飛びおり、亡くなった。

 母は有名なM。

 百恵さんが、家庭に入ったのとは、真逆に、兼業主婦のアイコンとなった。

しかし、私はMが、母親らしい事をしたとは思えない。

そして、父親のKも、娘のSさんをほっぽいて、銀座の高級クラブのママと浮き名を流したそうだ。

 しかし、Sさんは両親が戻って来てくれると、信じていた。

 そんな時、Dさんという、大女優が、Sさんを我が子のように可愛がった。

 自分のお腹を痛めて産んだ事がないが、彼女の愛は母親そのものだった。

 Mの流した涙は

「おかあさ~ん」

と、嘘泣きをした時とは明らかに違う、哀しみの涙だったのは、私でも、分かる。

 しかし、死ぬ前にもう少し、母として、娘に向き合っていたら、Sさんの悲劇は生まれなかったと、感じる。

 父親のKもしかりだ。

 親の愛情を受けられず、育った人は自己肯定感が低いと言われる。

 Dさんが、愛を注いでも、その壁は乗り越えられなかったのだろう。

 私から見ると実の両親より、Dさんの方が母性にあふれている様に感じる。

 だから、私は子供を産んだ、産まないで、女性を判断しない。

 産んだ事があっても、精神的に大人になれずに、育てられない人もいるし、産んだ事がないDさんのように、惜しみない愛情を注ぐ人がいるからだ。

 子供を産んだら、大人なのか?母性を持てるのか?私は違うと感じる。

 大人になりきれずに子供を産む人が増えた。

 昔から、いただろうが、それが、表面化する時代になった。

 哀しいばかりだ。