喧嘩上等?

 24歳で、初めて入院した。窓に鉄格子がある科だ。それから私の病院ジプシーが25年以上になるとは思っていなかった。

 県内のほとんどの病院を制覇した。

 最初は単なるパニック発作による、パニック障害だったが、鬱になり、摂食障害で、食べなきゃ死ぬよと言われても、スプーンですくったお粥を口に運ぶまで、手が震えて全て落ちる始末だ。

 途中、通院に変わった時はアルコール中毒になり、私の体重差は人一人分の違いがある。

 ある時、市外の病院に入院した。その日は初めての日だったせいか、眠剤を飲んでも眠れないので、食堂の椅子に喫煙所から漏れた灯りで、本を読んでいた。

 向かいに20歳年上のIさんが座り、ニタニタしながら

「ノンさんの唇、奪って宜しいでしょうか?」

と、今日会ったばかりだし、ふざけている態度で、虫ずが走り

「駄目です‼️」

と言って、席を立った。

 それからが、地獄だった。そのIさんは私の彼氏気取りで、普通にいい天気ですねと、話した男性、片っ端から

「お前、ノンさんに気があるんだろう!?」

と詰め寄る始末。

 若い頃、ボクサーを目指していたので、腕っぷしはそこいらへんのヤクザさんより強いので、誰も歯向かえなかった。

 ある時、際どい話しになるが、男性のシンボルまで、切っても死ねなかったと言うYさんが

「ノンさんに手を握ってもらえるだけで、俺は安心するんだ。貴女は天使だ。俺は男として不能だから」

と言われたので、事情を知っていた私は

「Yさんは不能ではないですよ。元気出して下さい。私の手で良いなら、いくらでも握手しますよ」

と、手を握ってあげた。他にどうしたら良かったのだろう?

 「ノンさん!IがYさんを殴った!」

と、違う男性が私に伝えに来たので、Yさんに会いに行くと目の回りに青アザを作って

「ノンさん、俺、ドジで転んでドアにぶつけちゃった、アハハ」

と殴られたと絶対に言わないYさんの優しさに、私の怒りはらMAXに達しIさんを呼び出し

「お前、Yさんに土下座ついて謝れ!」

と言う私の前で

「土下座ってこうするんですか~?」

と、ヘラヘラ笑いながら、かがんだので

「私にじゃ、ねぇだろうが!」

と、髪の毛スレスレに回し蹴りを喰らわした。私も馬鹿じゃ無い。頭は狙わなかった。

 丁度、看護師さんが来て、Iさんが

「ノンさんが虐める~」

と、逃げて行き、汚い奴だなと、先に手を挙げたのは隠して。

 その日から、私は暴力癖有りの要注意人物になり、Dr.と喧嘩をして強制退院させられた。

 当時の日記を読み返すと、平手打ちを5、6発喰らわしたと、書いてあり、Iさんの顔が左右スローモーションで、揺れる画像が目に浮かんで、やっちまったーと、思い出した。

 余程、私の事が嫌いだったのだろう?女性看護師達はルンルンしながら、私の荷物を段ボールにしまい、男性看護師さんは辛そうな顔をしていた。退院には時期尚早だからだし、私が想いを寄せていた看護師さんと、仲の良い看護師さんだったので、唯一、私の恋を応援してくれていたからだ。

 その看護師さんに手紙で、

「もう好きでもない人に追われるのに疲れました」

と、書いた次の日、Iさんのベッドに

「ノンさんに近付くな」

と、書いた紙が置かれていて、Iさんは誰なんだ?と、怒っていたが、私はその看護師さんがしてくれたと、少し嬉しかった。

 退院して、直ぐに内科に入院させられた。急性胃腸炎になっていたらしく、Dr.にこんなに酷くなるまで何やっていたのですか?と、怒られ、事情を話し(自らの場合)、命の保証は致しませんが、新しい病院に入院できるまで、居ても良いと便宜を計っていただき、喧嘩したDr.の、暴力癖有りの紹介状を持って5、6件病院を当たり、ようやく市外の病院で入院できるようにして貰えた。

 そのDr.が

「暴力はいけませんよ」

と、仰ったので、向こうからと言う私の言葉を遮り

「どんな事があっても、暴力はいけません」

に素直にハイと返事をした。

 Iさんも、汚れた私のスニーカーをバケツで一生懸命、洗ってくれたり、女の私には暴力振るわなかったし、良い人ではあったから、今は感謝している。

 女性が相手だと、直ぐ謝っちゃう。だって理詰めで、ヒステリー起こされると困ってしまうから。