正午のカンペン事件

 私は中学1年の時、学級委員長をしていた。ある時、不良(良い子だった)グループの男の子が

「今日の4時限目、国語のT先生だろ?俺、アイツ嫌いだから、昼のサイレン鳴ったら、みんなでカンペン落として驚かせてやろうぜ」

と、言ったら、ヤル、ヤルと話しは決まった。

 そして、4時限目の国語の女性教師のT先生の授業が始まった。

 カンペンというのは、缶と同じ素材で出来た筆箱の事で、落とすとかなり響く。

 12時に消防署のサイレンがなり、一斉に

ガシャーンと響き渡り、T先生は

「何なのです?これは!授業は取り止めます!落とした子は後で、職員室に来なさい!」

と、怒って返って行かれた。

 不良グループと、ほとんどの男子と、女子は2名だけ落とした。

 掃除当番だった私に、

「今、男子達が職員室で正座させられてる!」

と、不良グループの男の子は、女は来るなと言って職員室に謝りに行ったと聞き、私は

「落とさなかった人も、止めようと言えなかったのだから、同罪だよね?私、謝りに行くから、みんなで行ってT先生に許して貰おう。一部の男子だけ正座するなんておかしいよ!」

と、言うと皆分かったと、職員室へ向かおうとした時、一人の女の子が

「アンタだけ行けばいいじゃん!私、関係ないし、勉強しなくちゃいけないから帰る」

と言われ、私はこの子も説得出来ずに学級委員長なんてやっていたのか?と思ったら、悔しいやら、正座している男子達に悪いやら、人前で初めて泣いた。それをその子はニヤッと、笑って帰って行ったが、他の子達は

「中田さんのせいじゃないし、落とした子だけで、謝ればいいんだよ」

と、言われたが、涙が止まらなかった。

 正座している男子達を気にしながら、部活に出て、その日は終わった。

 驚いたのが次の日、教室へ入ると、黒板にチョークででっかく

「中田、ごめんな!」

と、正座させられた男子達の名前が全て書かれてあった。

 担任の先生は

「なんだ?これは」

と言っていたが、私は嬉しいやら、恥ずかしいやらで、

「ありがとう」

と、思いながら文字を消した。

 みんな愛すべきやつらなのだ。

 みんな、元気? 今も私はバカやっているよ!