いきなりマリッジリング?
同級生が
「中田さん、ギター以外にベースも弾けるでしょ?手伝ってくれない?」
と、カセットテープを渡して来た。
家に帰り殆どが、ベースから始まる3コードしかない、パンクロックだった。
後日、スタジオ練習という事でドラムの同級生と、ギターとボーカルの子を待っていた。
挨拶もなく、練習に入る。ベースの私から弾くと
「早い。歌えない」
と、言われゆっくりと弾いた。
2時間の練習が終わりミスドに寄ると、先程までの態度とうってかわって、
「中田さんっていうんだ?宜しくね」
と、明るく話し始めた。
私にナメられまいと虚勢を張っていたのだ。
同い年だが、高校中退したしんちゃんと同級生のみやと、一人だけ社会人の姉ちゃんの4ピースバンドだった。
木古内と言う、函館の近くの小さな町が姉ちゃんの出身だった。町興しの為、学校でバンドの催しものがあるので、姉ちゃんの車で向かった。
男性だとBOOWYとかXをコピーし、女性だと、プリプリとかレベッカの時代、パンクロックだった私達を町の子達はポカーンと観ていた。
帰ろうとする、私としんちゃんに町の中学生が
「ピック下さい!ピック下さい!」
と寄って来たのでペコちゃんの缶ケースに入れていた、ピックが全部なくなった。
そこまでは良かったのだ。皆、姉ちゃんの車に乗り込むと、多分、BOOWYのコピーバンドのギターの男の子が(薄紫色のスーツを着ていたので)夏で、暑くて窓を開けていたので、中に手を入れて、自分のしていた、よく、ビジュアル系の男の子がする、シルバーに赤の石が付いている指輪を外して、私の左薬指にはめて、
「これ、貰って下さい!」
と、名前も知らないし、今では顔も覚えていない背の高い男の子だったしか、記憶にないが、そうされたのは今でも覚えている。
帰りの車中の気まずい事。皆、何も話さなかった。
男の子からプレゼントされたのは私だけだから、私としても、貰っちゃったーと言える雰囲気では無い。
そのばつが悪いまま、函館まで帰って行った。
その男の子も、次いつ会えるか分からない私に何故指輪をくれたのだろう?
私はたまに何故かしら、分からないプレゼントをされる。その方々にお返し出来ない代わりに知り合いになった方にプレゼントを送る、プレゼント魔だ。
この人にはこれが喜んで貰えるかしら?と、考えるのが、唯一の楽しみだ。
その名前も知らない男の子は元気かしら?カッコいい、おじさんになっていたら、私も嬉しいが・・・。