貸し上手

 私が病気になり、母のパートだけではやって行けなくなって来た。

 私と母の携帯代の2万円が払えない。

 さぁ~どうしましょう。

 市外だが、Mさんに電話をして、お金を借りてと母に頼まれたので、電話すると

「ぴかちゃん(そう呼ばれていた)、幾ら必要なの?」

に、母が指で6と記したので

「6万なんだけど・・・・・・」

流石にMさんも、勘づいて

「ぴかちゃん、本当は幾ら必要なの?」

「携帯代の2万がないけど、2万借りて支払うと、母も私も食いっぱぐれちゃうの」

「分かった。今からぴかちゃん家に行くから、待ってて」

と言って、2時間後に奥様と両手に出来合い物の食料と

「ぴかちゃん、一緒に呑もう!」

と、ビールまで買って来て下さって、俺も呑むからと、私が好きなのを知っていて、私に負担を掛けない様にしてくれた。

 そして、携帯代の2万円を貸して、食べ物は返さなくていいと、これだけあれば10日は持つでしょ?と。

 私とMさんと、Mさんの奥様と下子な母は普通のジュースで、ニコニコしながら、端に座っていて

「ぴかちゃんの未来にかんぱ~い!!」

と、さっきまで、どうしようと思っていたのが、嘘の様に3人で、2時間位、宴を開いた。

 本当はいけないが、車で帰っていかれた。    そして、後日、Mさんが、車で来て下さり、お金を返した。本来なら、私が行くべきなのだが、電車で来るの大変だからと、遠方から来て下さった。

 そんなMさんも、42歳の若さでお亡くなりになられた。

 私は葬式に行けない代わりに奥様に少しばかり送ったら、何かの本で調べたのだろう。

 丁寧な畏まった文章で、お返しを戴いた。

 私も余裕がある時はなるべく、大変な知り合いにお金を貸す。あげたつもりで。

 突然、ピンチになる時もある。家計簿つけても、どうしようもない時がある。

 私も2万円を年下の男の子に財布に入っていたので、貸した事がある。

 矢張、返っては来なかった。

 でも、回り回って自分に返ってくると思っているし、彼も何か返せなかった事情があったのだろう。

 友人に

「私なら千円でも、貸さないよ」

と言われたが、その友人はお金に困った事がないから言えるのだ。

 私もMさんの様に、貸してやったぞ!ではなく、相手の気持ちを考えた貸し方をしたいが、あいにく貸せるモノが無い(笑)。